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青空文庫占い:結果

古来、人々は悩みがあると、四つ辻に立ち、聞こえてくる言葉で物事を占いました。これを『辻占』と言います。

青空文庫占い

作品名:

われはうたえども やぶれかぶれ

作者:

室生 犀星

書き出し:

 詩を書くのにも一々平常からメモをとっている。メモの紙切れをくりながらその何行かをあわせようとすると、それがばらばらになって粘(ねば)りがなくなりどうしてもくっ附かない、てんで書く気が動かないで嘔気(はきけ)めいた厭気までがして来る。こんな筈がないと紙切れを読みなおしている間に、頭に少しもなみが打って来ないで只のふろしきを展げたように、ぼやぼやと、よりどころがない、やはりだめだ、机の上を片づけながら臥てしまう。この六十日くらいの間なにも書いていないで、只、うつらうつらと寝るにまかしていた。書くしょうばいをしている奴が書くことが出来なくなると、一行もはたらかなくなってしまう。病いの重さもそうだが、頭がかすかすになって水分も油気もなくなるのだ、例のふろしきのような奴が夜昼なしにふうわりと冠っていた。私はその下にいた。ああいう詩がつづり合せられなくなるということは余程のことだ、出来ている行と行とを合せてゆけばよいだけなのに、口から、はあはあと大息を吐いてまいってしまう。これは余程のことだ。
 日が暮れ夜も九時になることが怖い。遅鈍な尿意がもよおしてそのために一時間か一時間半ごとに、起きてはばかりに行かねばならなくなる。それも尿意の放出があればいいのだが、つんぼのように悲しい閉尿の待ちぶせに合うのだ。なんとしても出ないのだ、出てもわずかばかりのしずくしか出ないのである。それでもよろこびとしなければならぬ。他人を騙すように私はいまおしっこなぞしたくないのだと呟(つぶや)く、おしっこがしたい奴はべつに庭の中をうろついていて、犬のように昨日自分でしたところに跼(かが)んで、山に穴のあくほど咳をしているあいつのことをいうのだ。此処にいる私は出ても出なくともちっとも、かかわりのない処にいる人間なのだ。頭はれいろうとしているし尿の事には無関心なのである。私はまったくおしっこなぞしたくないんです。苦情は先刻此処に跨(またが)っていて、いまも庭をぶらついているあいつの言分なんです。その証拠には私はもう帰りかけているくらいです。さっぱりと快い気分になってあるだけの重い残尿を放出して、あなたの処からかるがると出てゆこうとしている。あなたの真白なお腹は私をうけつけてくれなくとも、それはどうでも宜い、どうでも宜いのだがちょっとだけさせてくれませんか、ちょっと些(ほ)んのしずくでもそのお腹のうえに出させてくれませんか。私の全身は蒼ざめ此処で最早あなたに跨っていられないくらい、困憊(こんぱい)しきってふらふらになっているのだ。ほんとうのことを言えばそうなのだ、どんな大切な物と交換してもよいから、ちょっとだけ普通の人間のように小便させてくれませんか。これは今夜のねがいなのだ、今夜のねがいは後ろに何十年もやって来た果の果のねがいなのだ。だが閉尿は固く遂に私の膝がしらも腰もしびれ、扉につかまりながら私はやむなく廊下に出て行く。
 寝所にはいるとまた起き上って足袋をはき、羽織を着てはばかりに往く用意をする。どうにもじっとはして居られないのだ。書斎から茶の間への襖一枚、茶の間から勝手の板戸を開け、次の化粧の間の襖から湯殿への…

図書カードURL:

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