作品名:
和紙の教へ
作者:
柳 宗悦書き出し:
「紙漉重宝記」の絵語りの終りに、忘れ難い一図が差し入れてある。一枚の紙が風にひら/\と遙かに飛んで行くのを、人が追ひかけて拾はうとする図である。貴い紙を一枚でもおろそかにしてはすまないと云ふ意を込めたのである。絵にとり立てゝ美しさはないが、この一図を忘れずに加へたその心には美しさが濃い。物体ないと云ふ気持が溢れてゐるからである。どの本であつたか、紙に就いて神明を
畏るべしと云ふ意味の句が添へてあつた。清浄な紙の性質に就いて、貴い訓しである。
石州の黄ばんだ半紙を胸に描くとしよう。
甞てはありふれた質素な品であつたが、私がわけても好むものゝ一種である。工房を訪ねると、時としてはいとも貧しい箱舟や簀で、農事の片手間に、もの静かに漉いてゐる。薄暗い室や簡素な道具類や、うたゝ遠い昔の姿そのまゝを想はしめる。細々とした手仕事に過ぎなくはあるが、出来上つた紙を見ると、誠にりんとした所があつて…
図書カードURL:
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