作品名:
私の子供時分
作者:
伊波 普猷書き出し:
私の子供の時分のことを書いてくれとのことであるが、当時の事はおおかた忘れてしまって、記憶にのこっている部分はいたって少い。私の生れたのはもう三年経つと沖縄が廃藩置県になるという明治九年のことだ。
その頃の沖縄といえば、
熊本鎮台の分遣隊が古波蔵村に置かれるやら、
松田がやって来るやらで、
随分物騒であったろうが、残念ながら当人はそんなことなぞ覚えていようはずがない。
物心が付いた時分、私の頭に最初に打込まれた深い印象は私の祖父さんのことだ。私の祖父さんは、十七の時、家の系図を見て、自分の祖先に出世した人が一人もいないのを悲しみ、奮発して支那貿易を始め、六、七回も福州に渡った人だ。私が四つの時には祖父さんはまだ六十にしかならなかったが、髪の毛も
鬚も真白くなって、七、八十位の老人のようであった。いたって厳格な人ではあっ…
図書カードURL:
https://www.aozora.gr.jp/cards/000232/card54136.html
処理時間:0.15128087997436523438秒
データ取得試行回数:1回 ブロック判定︰0回 ルビ判定︰0回