作品名:
夢
作者:
芥川 竜之介書き出し:
わたしはすっかり疲れていた。肩や頸の凝るのは勿論、不眠症もかなり甚しかった。のみならず偶々眠ったと思うと、いろいろの夢を見勝ちだった。いつか誰かは「色彩のある夢は不健全な証拠だ」と話していた。が、わたしの見る夢は画家と云う職業も手伝うのか、大抵色彩のないことはなかった。わたしはある友だちと一しょにある場末のカッフェらしい硝子戸の中へはいって行った。そのまた埃じみた硝子戸の外はちょうど柳の新芽をふいた汽車の踏み切りになっていた。わたしたちは隅のテエブルに坐り、何か椀に入れた料理を食った。が、食ってしまって見ると、椀の底に残っているのは一寸ほどの蛇の頭…
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