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野田君
また惡いさうだね。だから言はないこつちやない。ぢつと寢てゐたまへ。病氣はこつちで辛抱強く馴らしてやるがいいんだ。一度馴れてしまつたら、こんなに可愛い奴はない。
池谷さんが死んだんでこれからお葬式に行くところだ。時間が半端なので、いまコロンバンで、珈琲をのみながら、この手紙を書いてゐるんだ。
前から君に「オフェリヤ遺文」のことを何か書けと言はれてゐるので、何か書かう書かうと思つてゐたが、この頃僕は非常に混亂した氣持でゐるんだ。それで、「オフェリヤ遺文」を書きながら小林が行つてゐたやうな、あんな遠いところまで、とても今の僕にはついて行けさうもない。
しかし今度「オフェリヤ遺文」を讀み直して、いままでとは全然異つた興味をもつて僕はこの作品を眺め出してゐる。どんな興味かといへば――簡單に言つてしまふと、僕は今度こんなアムビシァスな作品が書いて見たくなつてゐるんだ。
これは小林の私小説であると同時に、自分とはまるで異つた他人の中に自分を生かさうとした小説ではないかしらん。さうしてさういふ底の小説を書いた小林の氣持が三年もかかつて漸つと僕に解りかけて…
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