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青空文庫占い:結果

古来、人々は悩みがあると、四つ辻に立ち、聞こえてくる言葉で物事を占いました。これを『辻占』と言います。

青空文庫占い

作品名:

童貞

作者:

豊島 与志雄

書き出し:



 ぼんやりしていた心地を、ふいに、見覚えのある町角から呼び醒されて、慌てて乗合自動車から飛び降りた。それから機械的に家の方へ急いだ。
 胸の中が……身体中が、変にむず痒くって、息がつけなかった。頬辺から鼻のあたりに、こな白粉の香がこびりついていて、掌で……それからハンケチで、いくら拭いても取れなかった。拭けば拭くほど、ぷーんと匂ってきた。
 嬉しいようで、なさけないようで、ほーっと息を吐くと、その息の根が震えた。
 晴れてるのか曇ってるのか、底知れぬ茫とした空だった。……が、宵闇に浮び出てる軒燈の灯が、きらきらと、珍らしくて美しかった。
 よその家へでも迷い込むような気持で、静に自家の玄関へはいった。誰も出迎える者がない……よかった、と思うとたんに、女中が立ってくる気配がした。それが却ってきっかけとなって、つかつかと茶の間へはいっていった。
「まあー、朝から出たっきり、どこへ行っていました。」
「井上君のところで遅くなって……。」
「そう、御飯は。」
「済みました。」
「やはり井上さんのお宅で……。それならいいけれど、こんどからは、御飯はどうするかちゃんと云っておかなければ困りますよ。あなたのために随分待ちましたよ。」
 それっきりだった。……母は何にも感づいてはいないんだな。
 だが……天井からぶら下ってる電燈、茶箪笥や長火鉢、父の読み捨ての夕刊、それを丹念に…

図書カードURL:

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