作品名:
次郎物語
作者:
下村 湖人書き出し:
「
癪にさわるったら、ありゃしない。」と、乳母のお浜が、台所の上り
框に腰をかけながら言う。
「全くさ。いくら気がきついたって、奥さんもあんまりだよ。まるで人情というものをふみつけにしているんだもの。」と、
竈の前で、あばた面をほてらしながら、お糸婆さんが、能弁にあいづちをうつ。
「お前たち、何を言っているんだよ。」と、その時、台所と茶の間を仕切る障子が、がらりと開いて、お民のかん高い声が、鋭く二人の耳をうつ。
お糸婆さんは、そ知らぬ顔をする。お浜は、どうせやけ糞だ、といったように、まともにお民の顔を見かえす。見返されて、お民はいよいよきっとなる。
「お浜、あたしあれほど事をわけて言っているのに、お前まだわからないのかい。
恭…
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