作品名:
銭形平次捕物控
作者:
野村 胡堂書き出し:
江戸開府以来といわれた、捕物の名人銭形平次の手柄のうちには、こんな不思議な事件もあったのです。――これは世に
謂う捕物ではないかも知れませんが、危険を
孕むことにおいては、冷たい
詭計に終始した捕物などの比ではないといえるでしょう。
「親分ッ」
飛込んで来たのは、ガラッ八の八五郎でした。
「何というあわてようだ。犬を蹴飛ばして、ドブ板を跳ね返して、格子をはずして、――相変らず大変が頓馬に乗って、関所破りでもしたというのかい」
平次は朝の
陽ざしを避けて、冷たい板敷をなつかしむように、縁側に腹ん
這いになったまま、丹精甲斐のありそう…
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