作品名:
備前名弓伝
作者:
山本 周五郎書き出し:
備前の国岡山の藩士に、
青地三之丞という弓の達人がいた。
食禄は三百石あまり、早く父母に死別したので、伯父にあたる青地三左衛門の後見で成長した。十九歳の時家督を相続、少年の頃から弓の巧者だったので、お弓組にあがって勤めていた。三之丞は幼少の頃からおっとりした性質で、怒ったという顔を見せたことがないし、かつて人と
喧嘩口論をした
例がない。おまけにひどく口数のすくない男で、つまらぬ世間ばなしなどにはいつも横を向いている。
「珍しい上天気、いい日和でござるな」「……されば」「いや、妙な雲が見える、降るかも知れぬが、どうであろう」「……されば」「ここで降られては
鷹狩りのお供が辛い、ど…
図書カードURL:
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