作品名:
花桐
作者:
室生 犀星書き出し:
女が年上であるということが、女を悲しがらせ遠慮がちにならせる。時にはどういう男の無理も通させるようにするものである。花桐が年上であるだけに持彦は一層打ちこみ方が夢中であったし、女に対するあらゆる若い慾望のまとも、花桐にあった。甘えて見たり無理無体をいって見たり、ときには唏り泣きの声を聞くまで理由のないことで責めたりする、それは愛情が痒いところに手のとどかないような気のするときとか、愛情の過剰がそういう現われに変ったりするのである。花桐はそういう持彦のくせをよく知っていた。そのときの感情のあらわれで気持をはかっては見ているものの、持彦が年上の自分にたいしては母であったり姉であったりするさまざまのものを、どう避けようもなく、また、それが当然母のいない持彦のもとめるものであることも、しだいに分っていた。だが、しじゅう、ほとんど付き切りでいることや、少しの休みもなく愛情のあらわれに渇きを見ることには、花桐も自分の気持のあら…
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